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大切に使っている剪定ばさみの切れ味が悪くなったと感じていませんか。庭仕事に欠かせない剪定ばさみですが、特に錆びにくく丈夫なステンレス製は人気です。しかし、どんなに優れた道具でも、使い続けるうちに刃は摩耗し、切れ味は鈍ってしまいます。
この記事では、剪定バサミを研ぐ道具の選び方から、砥石やダイヤモンドシャープナーを使った具体的な研ぎ方、さらには初心者でもできる簡単な手入れ方法まで、網羅的に詳しく解説します。また、自分では難しいと感じる方向けに、プロに依頼した場合の研ぎ料金の目安や、やっかいな刃こぼれの修復方法、両手剪定ばさみのような特殊なハサミのメンテナンスについても深く掘り下げていきます。
正しい手入れは、道具の寿命を延ばすだけでなく、植物への負担を減らし、何より手入れの行き届いた道具を使う喜びにも繋がります。いつでも最高の切れ味を保ち、ガーデニングをさらに楽しみましょう。
記事のポイント
- ステンレス製剪定鋏の基本的な研ぎ方がわかる
- 道具や状態に応じた適切なメンテナンス方法を知る
- 初心者でもできる簡単な手入れのコツを掴む
- プロに依頼する場合の料金相場や選択肢を把握する
基本を知る!剪定鋏ステンレスの研ぎ方と準備

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- 剪定ばさみが切れなくなった時のサイン
- 最初に揃えたい研ぐ道具
- 刃こぼれの研ぎ方を先に確認
- 研ぐ前に!ヤニやサビを落す下準備
- ステンレスのハサミを研ぐ際の注意点
剪定ばさみが切れなくなった時のサイン

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剪定ばさみの切れ味が落ちてくると、いくつかの明確なサインが現れます。これらのサインを見逃さず、適切なタイミングでメンテナンスを行うことが、ハサミを長持ちさせ、作業効率を上げる上で非常に重要です。切れ味の低下は、植物にとっても大きなストレスとなります。
最も分かりやすいサインは、枝を切った際の断面が潰れていたり、ささくれていたりすることです。鋭い刃は植物の細胞を壊さずスパッと切断するため、断面は滑らかです。しかし、刃が鈍っていると繊維を押し潰すように切断してしまい、植物に余計なダメージを与えます。このような傷口は修復に時間がかかるだけでなく、病原菌が侵入する入り口となり、植物が病気にかかるリスクを高めてしまいます。
また、以前よりも切断に強い力が必要になったと感じる場合も、刃が摩耗して抵抗が大きくなっている証拠です。他にも、刃に光を当てたときに刃先が線のように白く光って見える場合、それは刃先が丸まって平らな面ができてしまっているサインです。もちろん、目視で確認できる細かな刃こぼれがある場合も、研ぎが必要な状態と言えます。
切れ味低下の主なサイン
- 切った枝の断面がきれいではなく、潰れている
- 枝を切るのに以前より強い力が必要になった
- 刃の表面にサビや取れないヤニが目立つ
- 刃先が丸まり、光に反射して白く光る線が見える
- 目視で確認できる小さな刃こぼれがある
- 切断時に刃同士が引っかかるような感触がある
これらのサインに一つでも当てはまれば、それはハサミがお手入れを求めている合図です。放置せず、早めのメンテナンスを心がけることで、大切な植物と道具の両方を守ることができます。
最初に揃えたい研ぐ道具

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剪定ばさみを研ぐためには、いくつかの専用道具を揃える必要があります。一度揃えてしまえば長く使えるものばかりですので、これを機に基本的な道具を準備することをおすすめします。適切な道具を選ぶことが、効率的で安全なメンテナンスの第一歩です。
最低限必要なのは、刃を研ぐための砥石やシャープナーですが、ハサミの状態を最良に保つためには、クリーナーや防錆油なども欠かせません。以下の表に、主な道具とその用途、選び方のポイントをまとめました。
| 道具名 | 主な用途 | ワンポイントアドバイス |
|---|---|---|
| 砥石 | 刃を研いで切れ味を戻す | #800〜#1200番手の中砥石が万能です。刃こぼれ修理用に#400番手前後の荒砥石、仕上げ用に#3000番手以上の仕上砥石があると完璧です。 |
| 刃物クリーナー | 刃に付着した樹液やヤニを落とす | スプレータイプが手軽でおすすめです。頑固なヤニには、少し時間を置いてから拭き取ると効果的です。 |
| さび取り | 発生したサビを化学的に分解・除去する | 研磨剤で落ちない頑固なサビに有効です。刃物を傷つけにくい消しゴムタイプや、ジェル状のものが使いやすいです。 |
| ブラシ類 | 全体の汚れや浮いたサビを落とす | 真鍮ブラシは、ステンレスを傷つけにくく、汚れ落としに適しています。歯ブラシも細かい部分の清掃に便利です。 |
| 防錆油・潤滑油 | 手入れ後のサビ防止と動きの改善 | 刃物専用の椿油や、浸透性の高い潤滑スプレーがおすすめです。可動部(カシメ)への注油も忘れずに行いましょう。 |
| 布(ウェス) | 汚れの拭き取りや油の塗布に使う | 着古した綿のTシャツなど、吸水性が良く柔らかい布が最適です。複数枚用意しておくと作業がスムーズです。 |
| 保護具 | 安全な作業のために身を守る | 刃物を扱う際は、厚手の作業用手袋を必ず着用しましょう。目を守る保護メガネもあるとより安全です。 |
いきなり全てを揃えるのは大変…という方は、まずは「中砥石」「刃物クリーナー」「防錆油」の3点から始めてみてはいかがでしょうか。これだけでも、基本的なメンテナンスは十分可能です。ヤニを落として軽く研ぎ、油を差すだけでも、ハサミの性能は格段に向上しますよ。
刃こぼれの研ぎ方を先に確認

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剪定ばさみを使っていると、誤って針金を切ってしまったり、硬い枝に無理な力をかけたりした際に、刃こぼれが起きてしまうことがあります。0.5mm程度の小さな刃こぼれであれば、ご家庭でのメンテナンスで十分に修復することが可能です。
刃こぼれの研ぎ方の基本は、刃こぼれの底面が完全に見えなくなるまで、刃全体の角度を保ちながら根気よく研ぐことです。このとき、#400番手程度の荒目の砥石から使い始めます。刃こぼれが見えなくなったら、#1000番手の中砥石で刃を整え、最後に#3000番手以上の仕上げ砥石で刃先を滑らかにするのが理想的な手順です。
ただし、ご自身での修復には限界があります。以下の点には十分注意してください。
刃こぼれを研ぐ際の注意点
1mmを超えるような大きな刃こぼれや、刃の深い部分に達するような欠けは、自分で直そうとするとかえって刃の形を崩してしまう可能性があります。無理に研ぐと大量の金属を削り落とすことになり、刃の熱処理された硬い層まで削ってしまいかねません。そうなると、ハサミの寿命を大きく縮める原因になります。
このような場合は、専門の研ぎ直しサービスに依頼することを強くおすすめします。
また、多くの剪定ばさみには「ハマグリ刃」と呼ばれる、断面がハマグリの貝殻のように緩やかなカーブを描いた形状が採用されています。この形状は、食い込みが良く、刃の強度を高める効果があります。研ぐ際は、このカーブを維持することが重要です。刃を砥石にベタッとつけず、少し浮かせるようなイメージで、元の刃の角度とカーブを丁寧になぞるように研いでいきましょう。
研ぐ前に!ヤニやサビを落とす下準備

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剪定ばさみを研ぐ前に必ず行いたいのが、刃に付着したヤニ(樹液)やサビをきれいに落とすことです。この下準備を怠ると、砥石がすぐに目詰まりしてしまい、研磨力が著しく低下します。また、汚れが研磨剤代わりになって刃に余計な傷をつけてしまう可能性もあるため、非常に重要な工程です。
手順1:全体の汚れ落とし
まずはスチールウールや真鍮ブラシ、使い古しの歯ブラシなどを使って、ハサミ全体の泥汚れや表面的なサビを大まかにこすり落とします。水洗いしながら行うと、より効果的です。
手順2:刃物クリーナーでヤニを除去
次に、刃にこびりついた粘着質のヤニを刃物クリーナーで除去します。クリーナーを刃にスプレーし、1〜2分ほど時間をおいてから布で拭き取ると、頑固なヤニも化学的に分解されてきれいに落ちます。多くの園芸用品メーカーが専用クリーナーを販売しており、アルスコーポレーションの公式サイトなどでも手入れ用品として紹介されています。
手順3:さび取り剤でサビを分解
刃物クリーナーで落ちない根深いサビには、さび取り剤を使用します。消しゴムのようにこするタイプや、ジェル状で塗布するタイプなどがあります。サビの部分に適用して指定された時間放置した後、水でよく洗い流します。このとき、浮き上がったサビや汚れを再度ブラシでこすると、より効果的に除去できます。
さび取り剤には酸性の強い製品が多いため、使用する際はゴム手袋を着用するなど、肌に直接触れないよう注意してください。また、化学反応でサビを落とした後の金属表面は非常に活性化しており、新たなサビが発生しやすい状態です。洗い流した後はすぐに水分を完全に拭き取り、防錆油を塗布することを忘れないでください。
この下準備を丁寧に行うことで、砥石の性能を最大限に引き出し、この後の研ぎ作業が格段にスムーズになります。
ステンレスのハサミを研ぐ際の注意点

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ステンレス製の剪定ばさみは、炭素鋼(ハガネ)製のものに比べて圧倒的に錆びにくく、手入れが楽という大きなメリットがあります。しかし、研ぐ際にはその材質ならではの特性を理解しておくことが重要です。
最も大きな特徴は、ステンレスはクロムを含有するため硬く、粘りがあるため、炭素鋼に比べて研ぎにくいという点です。そのため、鋼のハサミと同じ感覚で研ぐと思うように刃がつかず、時間がかかってしまうことがあります。
以下の表で、ステンレス鋼と炭素鋼の一般的な特徴を比較してみましょう。
| 項目 | ステンレス鋼 | 炭素鋼(ハガネ) |
|---|---|---|
| 耐錆性 | 高い | 低い(錆びやすい) |
| 硬度・粘り | 硬く、粘りがある | 非常に硬いが、粘りは少ない |
| 研ぎやすさ | 研ぎにくい(時間がかかる) | 研ぎやすい(刃がつきやすい) |
| 切れ味の持続性 | 比較的長く持続する | 摩耗しやすいが、鋭い刃をつけやすい |
この特性を踏まえ、ステンレスのハサミを研ぐ際のポイントは以下の通りです。
ステンレス製ハサミを研ぐコツ
- 砥石の番手を選ぶ:家庭で研ぐ場合、まずは#1000番前後の中砥石から始めるのがおすすめです。硬い材質なので、荒砥石から始めると深い傷が入りすぎる可能性があります。ダイヤモンド砥石を使うと、より効率的に研ぐことができます。
- 角度を一定に保つ:これは全ての刃物に共通しますが、特に硬いステンレスでは角度がブレると刃がつきにくいため、元の刃の角度(おおよそ15〜20度)を意識し、常に一定に保つことが重要です。
- 裏刃は絶対に研がない:ハサミは2枚の刃がすり合わさることで切れる構造です。切れ味の要である裏刃(平らな面)を研いでしまうと、刃同士に隙間ができてしまい、全く切れなくなります。刃返り(バリ)を取るために最後に軽く1回なでる程度に留めましょう。
- 力を入れすぎない:力を入れてゴシゴシ研ぐのではなく、砥石の上を滑らせるように、一定の軽い圧力で、回数を重ねて研ぐのがコツです。
これらの点を意識するだけで、研ぎにくいとされるステンレス製のハサミでも、しっかりと切れ味を回復させることが可能です。
実践!目的別の剪定鋏ステンレスの研ぎ方

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- まずは試したい研ぎ方の簡単な方法
- 砥石を使った本格的な研ぎ方
- ダイヤモンドシャープナーでの研ぎ方
- 特殊な両手剪定ばさみの研ぎ方とは
- プロに頼む剪場合の研ぎ料金の目安
- まとめ:ステンレス剪定鋏の研ぎ方|切れ味を復活させるコツ
まずは試したい研ぎ方の簡単な方法

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「砥石で本格的に研ぐのは、場所も取るし難しそう…」と感じる方のために、もっと手軽に日常のメンテナンスができる簡単な研ぎ方を紹介します。本格的な研ぎ直しには及びませんが、少し切れ味が落ちてきたな、と感じた時に行うメンテナンスとしては十分な効果が期待できます。
簡易シャープナーを使う方法
近年では、ハサミや包丁を手軽に研げる簡易シャープナーが数多く市販されています。多くはタングステン鋼などの非常に硬い素材でできたV字の研磨部があり、そこに刃を数回通すだけで、刃先を鋭くすることができます。
メリット:とにかく手軽でスピーディー。誰でも簡単に扱えます。
デメリット:刃を「削り取る」力が強いため、刃が痩せやすく、ハサミの寿命を縮める可能性があります。また、ハマグリ刃のような繊細な刃の形状を再現することはできません。
日常の応急処置として使うには便利ですが、多用は避けた方が良いでしょう。
耐水サンドペーパーを使う方法
ホームセンターなどで手に入る耐水サンドペーパーを使った、よりダメージの少ない簡易的な研ぎ方もあります。
- #600番〜#1000番程度の耐水ペーパーを、かまぼこ板のような平らな木片に貼り付けます。
- ペーパー部分を水で濡らし、ハサミの刃の角度に合わせて当てます。
- 刃先から根元に向かって、一定方向にスーッ、スーッと数回から十数回こすります。力を入れすぎず、刃のカーブに沿わせるのがポイントです。
- 刃の裏側にできたバリ(刃返り)を、ペーパーでごく軽く撫でて取り除きます。
この方法は、刃全体の形を崩しにくく、初心者でも失敗が少ないのが最大のメリットです。あくまで応急処置的な方法ですが、切れ味はかなり改善されます。
砥石を使った本格的な研ぎ方

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剪定ばさみの切れ味を本格的に回復させ、その性能を最大限に引き出すには、やはり砥石を使った研ぎ方が最も効果的です。最初は難しく感じるかもしれませんが、いくつかの重要なコツを掴めば、誰でも安全にプロ並みの切れ味を蘇らせることができます。
手順1:砥石の準備
まず、使用する砥石を十分に水に浸しておきます。一般的に「吸水性」の砥石は、全体が沈むくらいの水に5分〜15分ほど浸し、気泡が出なくなるのが目安です。濡れた布や専用のゴム台の上に置くと、作業中に砥石が滑らず安全です。
手順2:ハサミを固定して研ぐ
剪定ばさみは分解せず、組んだままの状態で研ぎます。利き手ではない方でハサミをしっかりと固定し、利き手で砥石を持って研ぐか、砥石を固定してハサミを動かします。ハサミの角度を安定させやすい、ご自身のやりやすい方法で構いません。
最も重要なのは、刃の角度を常に一定に保つことです。剪定ばさみの刃は少し丸みを帯びている(ハマグリ刃)ので、そのカーブに沿わせるように、砥石を動かすかハサミを動かします。まずは#1000番手程度の中砥石で、刃全体を均一に研いでいきます。このとき、砥石の表面に出てくる黒い研ぎ汁は、研磨作用を助ける役割があるので、洗い流さずに作業を続けましょう。
手順3:「小刃(こば)」をつける
刃全体の角度で研ぎ、刃返りが出たら、最後に刃先だけをほんの少しだけ鈍角に研ぐ「小刃引き」または「糸刃引き」と呼ばれる仕上げを行います。これは、刃先をほんの少しだけ立てて(元の角度にプラス1〜2度するイメージ)、砥石の上をごく軽い力で1〜2回滑らせる作業です。これを行うことで、刃の先端の強度が劇的に上がり、刃こぼれしにくく、良い切れ味が長持ちするようになります。
手順4:刃返り(バリ)を取る
研ぎ終わると、刃の裏側に金属のまくれ(刃返り)ができます。指の腹で刃先とは反対側からそっと触ってみて、ザラザラとした感触があれば、しっかり研げている証拠です。この刃返りを、砥石の角や仕上げ砥石で、裏側からごくごく軽く1回なでるようにして取り除きます。前述の通り、裏側を研ぎすぎると刃同士に隙間ができてしまうため、くれぐれも慎重に行ってください。
最後に全体の汚れをきれいに洗い流し、水分をよく拭き取ってから、可動部を中心に油を差して完了です。
ダイヤモンドシャープナーでの研ぎ方

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硬いステンレス製のハサミを効率よく研ぐ際に、非常に有効なのがダイヤモンドシャープナー(ダイヤモンド砥石)です。工業用ダイヤモンドの微細な粒子を金属の台金に電着させたもので、従来の砥石とは異なる多くのメリットがあります。
ダイヤモンドシャープナーのメリット・デメリット
- メリット:研削力が非常に高く、ステンレスやセラミックなどの硬い素材でもスピーディーに研ぐことができます。また、水を使わずに手軽に使える製品が多く、使用しても砥石のように平面が崩れる(凹む)ことがありません。
- デメリット:研削力が高い分、削りすぎる可能性があります。また、製品によっては砥石よりも高価な場合があります。
研ぎ方の基本は、通常の砥石と同じです。シャープナーを固定し、ハサミの刃の角度を合わせて研いでいきます。研削力が非常に高いため、力を入れすぎず、刃の上をなでるような軽い力で研ぐのがコツです。力を入れすぎると、刃に深い傷が入ったり、必要以上に削りすぎてしまったりする可能性があります。
| ダイヤモンドシャープナー | 一般的な砥石 | |
|---|---|---|
| 研削力 | 非常に高い | 番手による |
| 準備 | 不要な場合が多い(乾式可) | 吸水が必要 |
| メンテナンス | ほぼ不要 | 使用後の面直しが必要 |
| 価格帯 | 比較的高価 | 安価なものから高価なものまで幅広い |
様々な形状のものがありますが、剪定ばさみのようなカーブした刃には、断面が半円状になっているタイプや、先端が細くなったテーパー状のシャープナーが、刃のカーブにフィットしやすくおすすめです。
ダイヤモンドシャープナーは一つ持っていると、ハサミだけでなく、包丁やカマ、アウトドア用のナイフ、さらには爪切りなど、家庭内の様々な刃物のメンテナンスに活用できてとても便利ですよ。
特殊な両手剪定ばさみの研ぎ方とは

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庭の生垣を整える刈り込みばさみや、太い枝を切るための両手ばさみ(ロッパー)、高所の枝を剪定する高枝ばさみなど、両手で持って使用する大型の剪定ばさみも、基本的な研ぎ方は片手用のものと全く同じです。
ただし、サイズが大きく重いため、作業時の固定がより重要になります。不安定な状態で作業をすると、均一に研げないだけでなく、思わぬ怪我につながる危険性が高まります。もし作業用の万力(バイス)があれば、それに片方の柄を固定するのが最も安全で確実です。ない場合は、床に座って両足でしっかりと挟んだり、作業台の角に押し付けたりするなど、ハサミ本体が絶対に動かないように工夫してください。
大型ハサミの研ぎでの安全確保
大型の刃物は、その重量と長さから、研いでいる最中に手元が狂うと大きな怪我につながる可能性があります。必ず安定した場所で、無理のない姿勢で作業を行ってください。滑り止めのついた厚手の作業用手袋を着用することは必須です。安全第一で取り組みましょう。
研ぐ際は、砥石やシャープナーを利き手に持って、刃に当てて研ぐ方法がやりやすいです。刃渡りが長いため、一度に全体を研ごうとせず、刃元、中央、刃先と、3〜4つのセクションに分けて少しずつ研ぎ進めていくと、ムラなく均一に仕上げることができます。もちろん、刃の角度を保つこと、裏刃は研がないことといった基本原則は、片手用のハサミと全く同じです。
プロに頼む場合の料金の目安

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「自分で研ぐのは時間も自信もない」「祖父から譲り受けた高価なハサミだから失敗したくない」という場合は、プロに研ぎ直しを依頼するのが最も賢明な選択です。刃物の専門店や金物店、一部の大型ホームセンターなどで研ぎ直しサービスを受け付けています。
料金はハサミの種類や刃渡りの長さ、サビや刃こぼれの状態で大きく異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
| ハサミの種類 | 料金の目安(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| 剪定ばさみ(片手用) | 1,000円 ~ 2,500円 | ひどいサビや大きな刃こぼれがある場合は、追加料金(+500円〜)がかかることがあります。 |
| 刈り込みばさみ(両手用) | 1,800円 ~ 3,500円 | 刃渡りが長いものは高くなる傾向があります。 |
| 高枝切りばさみ | 2,500円 ~ 5,000円 | 分解・組立に手間がかかるため、比較的高額になります。 |
また、意外な選択肢として、地域の「シルバー人材センター」が包丁やハサミの研ぎサービスを提供している場合があります。比較的安価で依頼できることが多いので、お住まいの地域のセンターに問い合わせてみるのも良いでしょう。(公益社団法人 全国シルバー人材センター事業協会)
プロに依頼する最大のメリットは、単に刃を鋭くするだけでなく、刃と刃の噛み合わせ(すり合わせ)の調整や、全体の歪みやガタつきの修正まで行ってくれる点です。これにより、切れ味が新品同様、あるいはそれ以上に蘇ることも少なくありません。年に一度はプロによる総合メンテナンスに出す、というのも大切な道具を長く使うための良い方法ですね。
まとめ:ステンレス剪定鋏の研ぎ方|切れ味を復活させるコツ
この記事では、ステンレス製剪定ばさみの研ぎ方について、基本的な知識から実践的なテクニック、プロへの依頼まで幅広く解説しました。最後に、記事の要点をリスト形式でまとめます。このポイントを参考に、ぜひご自身の剪定ばさみのお手入れに挑戦してみてください。
- 剪定ばさみの切れ味低下は枝の断面が潰れることで判断できる
- 研ぐ前には刃物クリーナーでヤニや汚れを落とす下準備が不可欠
- ステンレスは硬く粘りがあるため中砥石やダイヤモンドシャープナーが有効
- 研ぐ際は元の刃の角度(ハマグリ刃のカーブ)を一定に保つことが最も重要
- ハサミの裏刃(平らな面)は切れ味の要なので絶対に研がないこと
- 最後に刃先を少し鈍角に研ぐ「小刃」をつけると切れ味が長持ちする
- 研ぎ終わったら刃返り(バリ)を裏側からごく軽く撫でて取り除く
- 初心者には簡易シャープナーや耐水サンドペーパーでの応急処置もおすすめ
- 両手ばさみのような大型のものは万力や足で安全に固定してから研ぐ
- 1mm以上のひどい刃こぼれや歪みがある場合は無理せずプロに依頼する
- プロの研ぎ料金は片手用で1,000円から、両手用で2,000円程度からが目安
- 手入れの最後には可動部を含め、必ず防錆油を塗布して保管する
- 定期的なメンテナンスがハサミの寿命を延ばし、結果的に経済的である
- 鋭い刃物での作業は植物へのダメージを最小限に抑え、健やかな成長を助ける
- 自分に合った方法を見つけて大切な道具を長く愛用することがガーデニングの楽しみを深める