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庭の手入れの最中、いつも通りに使っていた剪定鋏のバネが「パチン」という音と共に外れてしまい、作業が中断してしまった経験はありませんか。
お気に入りの道具だからこそ、できるだけ長く、そして安全に使い続けたいものです。剪定鋏のバネが外れる原因は一つではなく、バネ自体の劣化や本体の摩耗など、いくつかの要因が考えられます。
また、交換用のバネはどこで売ってるのか、特殊な種類があるのか、さらには代用は可能なのかといった疑問も次々と浮かんでくるでしょう。
この記事では、プロの知見を基に、剪定鋏のバネが外れる根本原因の特定方法から、初心者の方でも安心して取り組める交換のやり方、そして適切な交換部品の入手方法まで、一連の流れをより深く、そして詳細に解説していきます。
記事のポイント
- 剪定鋏のバネが突然外れてしまう根本的な原因の特定方法
- メーカー純正品など、最適な交換用バネの選び方と具体的な入手経路
- 写真付き解説で分かりやすい、初心者でも失敗しないバネの交換手順
- 修理が難しい場合の判断基準と、道具を長持ちさせるための適切な対処法
剪定鋏のバネ交換方法と不具合の根本原因

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- 剪定鋏のバネが外れる原因とは?
- バネ自体の磨耗を確認しよう
- 本体側の穴が広がっている可能性
- 長期保管方法も劣化に関係する
- 交換部品の入手方法について
剪定鋏のバネが外れる原因とは?

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剪定鋏のバネが意図せず外れてしまう現象には、必ず原因があります。その主な原因として挙げられるのは、「バネ自体の磨耗・劣化」と「ハサミ本体側の取り付け穴の広がり」という、大きく分けて2つの物理的な問題です。剪定作業での開閉動作は、私たちが思う以上にバネの先端と本体の穴に摩擦を生じさせています。長年にわたる使用で、この摩擦が金属を少しずつ、しかし確実に削り取っていくのです。
特に、バネは細い鋼材(多くは炭素鋼やステンレス鋼)で作られているため、より厚く硬い素材で作られたハサミ本体よりも磨耗しやすいのは避けられません。さらに、繰り返し圧縮と伸長を繰り返すことで発生する「金属疲労」も無視できない要因です。金属疲労が蓄積すると、バネ本来の反発力(バネレート)が低下し、本来の位置に留まる力が弱まるため、わずかな隙間や衝撃で外れやすくなります。まずは道具をよく観察し、どこに問題の根本があるのかを見極めることが、適切な修理への最も重要な第一歩と言えるでしょう。
原因の特定が最重要
原因を正確に特定せずに、ただ新しいバネに交換するだけでは、対症療法にしかなりません。もし本体側の穴の広がりに問題がある場合、新品のバネもすぐに外れてしまい、時間と費用が無駄になる可能性があります。急がば回れで、まずはじっくりと原因究明に取り組みましょう。
バネ自体の磨耗を確認しよう

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バネが外れるトラブルに見舞われた際、真っ先に疑うべきはバネそのものの状態です。もし手元に交換用の新しいバネがあれば、それと比較することで磨耗の度合いが一目瞭然になります。確認すべき最も重要なポイントは、バネの両端にある、本体に引っ掛けるためのフック状の部分です。
このフック部分が本体の穴にしっかりと食い込むことで、バネは固定されています。長期間の使用によりこの部分が摩耗し、新品時よりも細くなったり、角が取れて先端が丸くなってしまったりすると、引っ掛かりが浅くなり、結果として外れやすくなるのです。指で触ってみて、明らかに「痩せている」感覚や、エッジがなくなっているのが分かれば、バネ自体の磨耗が原因であると断定して良いでしょう。このケースであれば、新しい純正バネに交換することで、不具合はほぼ解決します。
本体側の穴が広がっている可能性

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「新品のバネに交換したのに、なぜかすぐにまた外れてしまう…」このような状況に陥った場合、次に疑うべきはハサミ本体側の問題、つまりバネを固定している穴が広がってしまっている可能性です。ハサミ本体はバネよりも頑丈な金属で作られていますが、それでも限界はあります。特に、硬い枝を無理に切断するなど、設計想定以上の負荷をかける使い方を続けると、テコの原理で力が集中する支点部分や、バネの固定穴にダメージが蓄積します。
確認方法としては、まずバネを完全に取り外し、穴の形状を明るい場所でじっくりと観察します。本来はきれいな真円であるはずの穴が、長年の摩擦で上下あるいは左右に削れ、楕円形に変形していないかを確認してください。また、穴の縁に段差やくぼみができていないかも重要なチェックポイントです。もし、このような変形が確認できた場合、残念ながらバネを交換するだけでの完全な修理は困難です。広がった穴ではどのバネも適切に保持できず、すぐに外れてしまうため、安全な作業を継続するためにはハサミ自体の買い替えを真剣に検討する必要があります。
本体側の穴を確認する3つのポイント
- 形状の確認:穴が真円ではなく、楕円形やいびつな形に変形していないか。
- 縁の状態:穴のフチが削れて、段差やバリ(金属のささくれ)が発生していないか。
- 装着時の感触:新しいバネを取り付けた際に、明らかにぐらつきや遊びが大きすぎないか。
長期保管方法も劣化に関係する

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剪定鋏のバネの寿命は、使用頻度だけでなく、使わない期間の保管方法にも大きく左右されます。多くの人がやりがちな間違いが、ハサミを閉じた状態でストッパーをかけ、そのまま長期間保管してしまうことです。これはバネの劣化を著しく早める原因となります。
ハサミを閉じた状態というのは、バネが常に最大限に圧縮され、継続的に負荷(応力)がかかり続けている状態を意味します。これが金属疲労を早め、バネの反発力を徐々に奪っていくのです。バネの寿命を最大限に延ばすためには、使用しないときはハサミを開いた状態で保管し、バネに負荷がかからない状態を保つのが理想的です。ただし、刃を開いたままの保管は非常に危険ですので、お子様やペットの手が絶対に届かない、施錠できる棚や工具箱に収納するなど、安全管理を徹底することが大前提となります。
究極の保管方法と日々のメンテナンス
最も理想的な長期保管方法は、少し手間はかかりますが、バネそのものを取り外しておくことです。これによりバネへの負荷はゼロになり、劣化を最小限に抑えることができます。また、保管前には刃や可動部に付着した樹液や汚れをきれいに拭き取り、刃物用の椿油などを薄く塗布しておくと、サビの発生を防ぎ、バネだけでなくハサミ全体の寿命を延ばすことにつながります。
交換部品の入手方法について

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交換用のバネを入手する上で最も重要なことは、必ず使用している剪定鋏のメーカーが供給する「純正部品」を選ぶことです。一見同じように見えるバネでも、微妙なサイズ、線径、巻き数、そして材質の違いが、ハサミの性能に大きく影響します。設計通りの反発力(バネレート)でなければ、開閉がスムーズでなくなったり、最悪の場合はすぐに外れたり破損したりする原因となります。
多くの信頼できるメーカーでは、本体の品番や部品名、あるいは部品に割り振られたJANコードによって、ネジ一本からでも交換部品を注文できる体制を整えています。国内大手の園芸刃物メーカーであるアルスコーポレーション株式会社の公式サイトでも、純正部品の使用が製品本来の性能を維持するために不可欠であると明記されており、オンラインで部品を購入することも可能です。
部品の主な入手先は、大型のホームセンター、金物店、あるいはJA(農協)のような農具を専門に扱う店舗です。店頭に在庫がない場合でも、取り寄せを依頼することができます。注文の際は、間違いを防ぐために、ハサミ本体に刻印されている品番を正確に伝えましょう。もし品番が不明な場合は、ハサミ本体の写真を撮って店員に見せるとスムーズです。
藤原産業「千吉 ラチェット式太枝切鋏」交換部品の例
| 部品名 | JANコード | 対象品番 |
|---|---|---|
| 千吉 ラチェット式太枝切鋏替刃 | 4977292640626 | SGFL-3/SG-22 |
| 千吉 太枝切鋏用バネ(2pcs) | 4977292640589 | SGFL-3/SG-22 |
| 千吉 太枝切鋏ボルト 1 | 4977292640596 | SGFL-3/SG-22 |
| 部品 SGFL-3用ラチェット金具 | 4977292070317 | SGFL-3 |
このように、バネだけでなく関連するネジや金具も個別に供給されている場合があります。どこで購入・注文すればよいか分からない場合は、まずハサミを購入した店舗、またはメーカーのカスタマーサービスに直接問い合わせてみることを強くお勧めします。
具体的な剪定鋏のバネ交換方法の詳細手順

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- ハンドルを分解してバネを取り出す
- ナットを外す際に必要な工具
- 金具とバネの正しい取り付け位置
- ネジの仮止めと本締めのポイント
- 交換が難しい場合は購入しなおしの目安
- まとめ:剪定鋏のバネ交換方法|外れる原因と手順を徹底解説
ハンドルを分解してバネを取り出す

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ここからは、実際に剪定鋏のバネを交換するための具体的な手順を、ラチェット式太枝切鋏を例にとって詳しく解説します。この基本的な流れは、他の多くの剪定鋏にも応用可能ですので、ぜひ参考にしてください。多くの剪定鋏では、バネはハンドルの内側に巧妙に組み込まれているため、交換作業はまずハンドルを左右に分解することから始まります。
製品の構造によって固定されているネジの数や位置は異なりますが、通常は複数のネジを外すことでハンドルを分離できます。作業を始める前に、製品の構造をよく観察しましょう。ネジを順番に緩めていくと、内部のバネの力で部品が不意に飛び出す可能性があります。そのため、ハンドル全体を手でしっかりと押さえながら、ゆっくりと慎重にネジを外していくことが安全作業のポイントです。ハンドルが無事に左右に分解できれば、目的である古いバネと、それに関連する金具類を容易に取り出すことができるはずです。
安全な作業環境の確保が最優先
剪定鋏は鋭利な刃物です。分解・組立作業中の不意な接触によるケガを防ぐため、必ず厚手の作業用手袋を着用してください。また、ネジやワッシャーなどの細かい部品は非常に紛失しやすいため、磁石付きのパーツトレーや、空き箱などを用意し、外した部品を一箇所にまとめて管理することを強く推奨します。安全な作業は、適切な準備から始まります。
農業従事者向けの安全情報を提供する農林水産省のウェブサイトでも、農業機械や道具の定期的な点検・整備の重要性が強調されています。安全な園芸作業のためにも、道具の構造を理解し、正しくメンテナンスするスキルは非常に大切です。
ナットを外す際に必要な工具

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ハンドルの分解や部品の交換作業をスムーズかつ安全に行うためには、適切な工具を正しく使用することが絶対条件です。特に、ネジのサイズに合っていないドライバーやレンチを使用すると、ネジの頭(ネジ山)を「なめる」と呼ばれる状態にしてしまい、最悪の場合、ネジを回すことができなくなり分解そのものが不可能になってしまう恐れがあります。作業を始める前に、必ず必要な工具を揃えておきましょう。
主な必要工具とその選び方
一般的な剪定鋏の分解には、六角棒レンチ(通称:六角レンチ)やモンキレンチ、プライヤーなどが必要となります。今回例に挙げているラチェット式太枝切鋏の場合、具体的には以下の工具が適合します。
- 6mmの六角棒レンチ:刃の固定など、主要な大きいネジに使用します。
- 4mmの六角棒レンチ:ハンドル部分など、比較的小さいネジに使用します。
- モンキレンチまたはスパナ:ネジの裏側にあるナットを固定するために必須です。
ネジを回す際、その裏側がナットで締め付けられている「共回り」する構造がほとんどです。この場合、片側からレンチでネジを回そうとしても、ナットも一緒に回ってしまうため、永久に緩めることができません。必ずモンキレンチなどで裏側のナットが動かないようにしっかりと固定した状態で、もう一方のレンチを使ってネジを回すのが基本です。また、サビなどで固着してしまったネジには、事前に浸透潤滑剤を少量スプレーしておくと、格段に作業がしやすくなります。
金具とバネの正しい取り付け位置

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古いバネを無事に取り外せたら、いよいよ新しいバネの取り付けです。この工程で最も重要なのが、バネと、それに関連する金具の向きや組み合わせを、分解前と全く同じ状態に再現することです。ほんの少し向きが違うだけでも、バネが正しく機能しなかったり、ハンドルの開閉に支障をきたしたりします。
この失敗を防ぐ最も効果的な方法は、分解を始める前に、スマートフォンのカメラで元の状態をあらゆる角度から複数枚撮影しておくことです。写真という客観的な記録があれば、組み立ての際に迷うことはありません。多くの場合、バネのフック部分を引っ掛けるための専用の金具がセットになっています。この金具にある凹みや突起、穴などをよく観察し、バネの先端が「カチッ」と収まる正しい位置に取り付けます。そして、ハンドル本体にある所定の取り付け穴に、バネを吊り下げるようなイメージで丁寧にセットしてください。この位置決めが、修理の成否を分けると言っても過言ではありません。
ネジの仮止めと本締めのポイント

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全ての部品を正しい位置にセットし、左右のハンドルを合わせたら、ネジを締めて最終的な組み立てを行います。ここでの重要なコツは、いきなり全てのネジを全力で固く締めるのではなく、まずは全てのネジを軽く締める「仮止め」の状態にすることです。
仮止めをすることで、部品同士が正しい位置に収まるための「遊び」が生まれ、全体の歪みを防ぐことができます。全てのネジが軽く締まったら、一度ハンドルの開閉やラチェット機能の動作を確認します。特にラチェット機能を持つ鋏では、ラチェット機構部分のネジを強く締めすぎると、刃のスムーズなスライドが妨げられることがあります。この部分は、実際に動かしながら、少し緩めを意識して最適な締め付け具合に調整する必要があります。
全体のバランス、そして各部の動作に全く問題がないことを確認できたら、いよいよ各ネジを本締めしていきます。この際、自動車のタイヤ交換などでも用いられる「対角線締め」を意識すると、均等な力で締め付けることができ、部品の歪みを最小限に抑えられます。ただし、前述の通り、全てのネジを力任せに締めれば良いわけではありません。説明書などを参考に、適切な力(トルク)で締め付けることを心がけましょう。
交換が難しい場合は購入しなおしの目安

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適切な部品交換とメンテナンスを行えば、愛用の道具を長年にわたって使い続けることが可能です。しかし、いくつかの状況においては、修理を試みるよりも、安全と効率を考えて新しい製品に買い替えた方が賢明な判断となるケースもあります。
最も明確な買い替えのサインは、これまで繰り返し述べてきた通り、ハサミ本体側にあるバネの固定穴が摩耗によって大きく広がってしまっている場合です。この状態では、どのようなバネを取り付けても根本的な解決にはならず、作業のたびにバネが外れるストレスと危険が伴います。また、長年の使用でネジが完全に錆びついて固着し、分解自体が困難な場合や、ご自身の技術では安全に交換作業を完了させる自信がない場合も、決して無理はしないでください。
一つの道具を大切に使い続ける精神は非常に尊いものです。しかし、そのこだわりが作業効率の低下や、何よりもご自身の安全を脅かす結果に繋がっては本末転倒です。剪定作業は、道具の不具合を気にすることなく、切る対象に集中できる状態で行うのが最も安全で、かつ美しい仕上がりにつながります。少しでも「このまま使い続けるのは危ないかもしれない」と感じたら、それは道具が教えてくれる買い替えのサインです。安全を最優先し、新しい剪定鋏の購入を検討しましょう。
まとめ:剪定鋏のバネ交換方法|外れる原因と手順を徹底解説
この記事では、剪定鋏のバネが外れてしまう根本的な原因の究明から、初心者でも安心して取り組める具体的な交換手順、そして安全な作業のための注意点までを詳しく解説しました。最後に、本記事で解説した重要なポイントを一覧でまとめます。
- バネが外れる二大原因は「バネ自体の磨耗」と「本体側の穴の広がり」
- 最初にチェックすべきはバネ両端のフック部分が痩せていないか
- バネを新品にしても直らない場合は本体の穴の変形を疑う
- ハサミを閉じた状態での長期保管はバネの金属疲労を促進させる
- 交換部品は性能と安全のためメーカー指定の純正品を選ぶのが鉄則
- 交換作業時はケガ防止のため必ず厚手の作業用手袋を着用する
- 分解にはサイズに合った六角棒レンチやモンキレンチを準備する
- ネジを緩める際は裏側のナットをレンチで固定し共回りを防ぐ
- 分解前にスマホで元の状態を撮影しておくと組み立てが非常に楽になる
- バネと付属金具は正しい向きと組み合わせでセットする
- ネジは一度「仮止め」して全体の動作を確認してから「本締め」する
- ラチェット機構など締めすぎると動作不良を起こす箇所もあるので注意
- 本体の穴が広がっているなど根本的な修理が困難な場合は買い替えが賢明
- 分解や組み立てに少しでも不安があれば無理せず新品の購入を検討する
- 正しい知識で道具をメンテナンスし、安全で快適な園芸作業を継続する
- ラチェット部分など締めすぎると動かなくなる箇所もある
- 本体の穴の広がりなど修理が困難な場合は買い替えを検討する
- 安全に作業できる自信がない場合も無理はしない
- 正しい手順でメンテナンスを行い安全に剪定作業を行う