剪定ばさみ

剪定鋏のヤニ取り代用は?身近な物で簡単手入れ

剪定鋏のヤニ取り代用は?身近な物で簡単手入れ

和盆日和・イメージ

切れ味が悪くなった剪定鋏、その原因は刃にこびりついた「ヤニ」かもしれません。専用の剪定鋏ヤニ取りスプレーを使えば簡単に落とせますが、「わざわざ買うのは…」と感じる方も多いのではないでしょうか。

実は、ご家庭にあるものでもヤニ取りは可能です。例えば、剪定鋏のヤニ取りに重曹を用いる方法は、手軽で効果的な代替案として知られています。

この記事では、特に手ごわい剪定ばさみの松ヤニの取り方をはじめ、剪定鋏のヤニ取りにおすすめな代用品と、正しいお手入れの手順を詳しく解説します。大切な道具を長持ちさせ、次の剪定作業を快適にするための知識をご紹介します。

記事のポイント

  • 剪定鋏にヤニが付着するデメリットと手入れの重要性
  • 専用クリーナーと家庭にある代用品それぞれの特徴
  • 重曹や洗剤を使った具体的なヤニ取りの手順
  • ヤニ取り後に行うべき刃の研ぎ方から保管方法まで

 

剪定鋏のヤニ取り代用|試す前に知るべき基本

剪定鋏のヤニ取り代用|試す前に知るべき基本

和盆日和・イメージ

  • なぜ剪定鋏の手入れが必要なのか
  • 切れ味を復活させる基本的な流れ
  • 市販されているヤニ取りスプレー
  • 編集部おすすめのヤニ取りグッズ
  • 頑固な松ヤニの取り方

なぜ剪定鋏の手入れが必要なのか

なぜ剪定鋏の手入れが必要なのか

和盆日和・イメージ

剪定鋏の手入れは、単に道具を綺麗に保つという эстетическое (aesthetic) 観点以上に、植物の生命と作業者の安全を守るための極めて重要な作業です。手入れを怠ることで生じるデメリットは、想像以上に深刻なものになる可能性があります。

最大の理由は、植物を病気のリスクから守るためです。ヤニや汚れが付着したハサミは、刃の滑りが著しく悪くなり、枝を切るのではなく潰してしまいます。植物の細胞が不必要に破壊された粗い切り口は、人間で言えば治りにくい擦り傷のようなもの。この傷口は乾燥しにくく、病原菌が侵入するための格好の入り口となってしまいます。例えば、バラの枝枯病や果樹の腐らん病といった病気は、汚れた剪定鋏を介して健全な株にまで伝染することが知られています。

もう一つの理由は、作業効率の向上と作業者の安全確保です。切れ味の悪いハサミで硬い枝を切ろうとすると、無駄な握力と腕力が必要となり、作業が格段に疲れやすくなります。これは長時間の作業におけるパフォーマンス低下や、腱鞘炎などの反復性ストレス障害のリスクを高めることにも繋がります。さらに、無理な力を加えた結果、刃が滑ったり、枝が予期せぬ方向に跳ねたりして、思わぬ怪我につながる危険性も否定できません。

手入れを怠ることで生じる具体的なリスク

  • 植物側:切り口の治癒が遅れ、病原菌(糸状菌や細菌)が侵入しやすくなる。ハサミを媒介として病気が他の植物へ蔓延する。
  • 作業者側:作業効率が大幅に低下し、身体的疲労が増大する。無理な力が原因で、刃滑りによる切り傷などの事故リスクが高まる。

このように、定期的な手入れは、大切な植物の健康を守り、安全で快適な園芸作業を継続するために、絶対に欠かせない習慣なのです。

切れ味を復活させる基本的な流れ

切れ味を復活させる基本的な流れ

和盆日和・イメージ

剪定鋏の性能を最大限に引き出し、長く愛用するためには、場当たり的な手入れではなく、体系化された手順を踏むことが重要です。基本的なメンテナンスは、大きく分けて「洗浄」「錆び取り」「研ぎ」「保護」という4つのステップで構成されます。この流れを理解し実践することが、プロのような切れ味を維持する秘訣です。

メンテナンスの4ステップ

  1. STEP1:洗浄(汚れとヤニの除去)
    メンテナンスの第一歩。刃に付着した泥、ホコリ、そして切れ味を鈍らせる最大の原因である樹液(ヤニ)を徹底的に取り除きます。この段階で汚れを完璧に落とすことが、後の工程の質を左右します。
  2. STEP2:錆び取り(腐食の除去)
    刃やネジ周りに発生した錆びは、切れ味を損なうだけでなく、ハサミの開閉を妨げ、最終的には金属の強度を低下させます。市販の錆び取り剤や専用の消しゴムなどを使い、丁寧に腐食部分を除去します。
  3. STEP3:研ぎ(刃先の再生)
    切れ味が落ちたと感じたら、砥石やダイヤモンドシャープナーで刃を研ぎ、鋭利な刃先を再生させます。正しい角度で研ぐことで、新品時のような軽快な切れ味が蘇ります。
  4. STEP4:保護(防錆と潤滑)
    最後の仕上げです。刃の表面や可動部に防錆効果のある油を薄く塗り、新たな錆びの発生を防ぎます。同時に、油膜が潤滑剤となり、スムーズな開閉を助けます。

この「洗浄 → 錆び取り → 研ぎ → 保護」という一連のサイクルを、剪定作業の後には必ず行う習慣をつけることで、剪定鋏は常に最高のパフォーマンスを発揮し、あなたの良きパートナーとして長く活躍してくれるでしょう。

市販されているヤニ取りスプレー

市販されているヤニ取りスプレー

剪定鋏のヤニ取りにおいて、最も手軽で、かつ高い効果を期待できるのが市販の専用クリーナー(ヤニ取りスプレー)です。園芸用品メーカー各社から様々な製品が販売されており、その多くが誰でも簡単に扱えるスプレータイプであることが特徴です。

これらのクリーナーの有効成分は、界面活性剤とアルカリ剤の組み合わせであることが一般的です。植物のヤニ(樹脂)は酸性の性質を持つため、アルカリ性の液体を吹きかけることで化学的に中和され、頑固に固着したヤニが分解・軟化します。さらに界面活性剤が、浮き上がった汚れを刃の表面から剥がし、再付着を防ぐ役割を果たします。これにより、物理的に強く擦ることなく、刃を傷つけるリスクを最小限に抑えながら、安全に汚れを落とせるのです。

使い方は非常にシンプルです。ヤニが付着した刃に直接スプレーし、製品の指示(通常は30秒〜数分)に従って放置した後、乾いた布やキッチンペーパーで拭き取るだけで、驚くほど綺麗になります。特に松やイチジク、ゴムの木など、ヤニが多い植物の剪定後にはその効果をはっきりと実感できるでしょう。

私も様々な代用品を試してきましたが、やはり専用品は「効果の確実性」と「作業の手軽さ」のバランスが最も優れていると感じます。園芸用品メーカーのアルスコーポレーションの公式サイトなどでも、専用クリーナーが推奨されています。一本常備しておくと、面倒な手入れのハードルがぐっと下がりますよ。

豆知識:アルカリ性の強さを示す「pH」

液体の性質はpH(ペーハー)という数値で示され、7が中性、それより小さいと酸性、大きいとアルカリ性です。植物のヤニが酸性(pHが低い)なのに対し、専用クリーナーや重曹水はアルカリ性(pHが高い)です。このpHの差を利用して汚れを中和するのが、科学的な洗浄の基本原理です。

価格も数百円からと手頃なものが多く、ホームセンターや園芸店、オンラインショップで簡単に入手可能です。様々な代用品を試す前に、まずは信頼できるメーカーの専用クリーナーを使ってみることを強くおすすめします。

おすすめのヤニ取りグッズ

おすすめのヤニ取りグッズ

和盆日和・イメージ

ヤニ取り作業をより効率的かつ完璧なものにするためには、クリーナーだけでなく、いくつかの便利なメンテナンスグッズを揃えておくと非常に役立ちます。ここでは、特におすすめだと感じている「三種の神器」とも言えるアイテムをご紹介します。これらを揃えることで、ヤニ取りからその後のメンテナンスまで、一貫してプロレベルのケアが可能です。

グッズ名 主な用途 特徴と選び方のポイント
ダイヤモンドシャープナー 刃の研ぎ 砥石のように水に浸す手間がなく、乾いたまま手軽に使えるのが最大の魅力です。番手(目の粗さ)があり、#400程度が一般的な研ぎ直しに、#600以上が仕上げに適しています。携帯に便利なペン型やカード型がおすすめです。
刃物用椿油(つばきあぶら) 錆び止め・保護 日本の刃物手入れに古くから使われてきた天然由来のオイル。不乾性油であるため酸化しにくく、刃の表面に安定した油膜を形成して湿気から守ります。サラダ油などと違い、時間が経ってもベタつかず、ホコリを呼びにくいのが特徴です。
錆び取り消しゴム 錆び落とし ゴムに研磨剤を練り込んだ製品で、文房具の消しゴムのように擦るだけで、点錆びや表面の軽い錆びを手軽に落とせます。刃へのダメージが少なく、細かな部分や曲面の錆び落としにも重宝します。粗目・中目・細目などの種類があります。

これらの基本的なグッズに加えて、以下のアイテムもあるとさらに便利です。

  • メラミンスポンジ:水だけで汚れを落とす強力なスポンジ。重曹と組み合わせてヤニを擦ると効果的ですが、研磨作用が強いので優しく使うことが重要です。
  • 真鍮ブラシ:鋸(のこぎり)の目立ての隙間など、細かい部分に入り込んだヤニや木屑をかき出すのに便利です。

特に「ダイヤモンドシャープナー」「椿油」は、剪定鋏を一生ものとして長く大切に使いたい方には必須とも言えるアイテムです。初期投資はかかりますが、常に最高の切れ味を維持できることを考えれば、その価値は十分にあります。

これらのグッズをうまく活用し、ワンランク上のメンテナンスを目指しましょう。

頑固な松ヤニの取り方

和盆日和・イメージ

植物の樹液の中でも、特に松、杉、ヒノキといった針葉樹のヤニは、粘着力が非常に強く、空気に触れると硬化する性質があるため、一度こびりつくと非常に厄介です。通常の刃物クリーナーでは一度で落としきれない場合も少なくありませんが、いくつかの対処法を知っておけば安心です。

家庭で安全に行える最も効果的な方法は、無水エタノールや消毒用エタノールを使用することです。アルコールには松ヤニの主成分である樹脂を溶解させる作用があります。

消毒用エタノールを使った方法

  1. 換気を良くし、火の気のない場所で作業を行います。
  2. キッチンペーパーや丈夫な布に、消毒用エタノールを十分に染み込ませます。
  3. ヤニがこびりついた部分を、エタノールを染み込ませた布でパックするように覆い、5分〜10分程度放置します。これにより、硬化したヤニが軟化し、溶け出します。
  4. ヤニが十分にふやけたら、布で力を入れて擦り取ります。一度で落ちない場合は、この作業を根気よく繰り返します。

この方法は、刃へのダメージが少なく、使用後の処理も簡単(エタノールは揮発するため)なので、第一選択としておすすめです。

灯油やガソリン、シンナー類の使用は絶対に避けるべき

古い情報サイトや個人のブログなどでは、灯油やガソリンでヤニを落とす方法が紹介されていることがありますが、これらは非常に危険です。これらの液体は引火性が極めて高く、静電気のようなわずかな火花でも引火・爆発する危険性があります。総務省消防庁もガソリン等の危険物の取り扱いに注意喚起しており、一般家庭での使用は絶対に避けるべきです。(出典:総務省消防庁「ガソリン等の危険物の貯蔵・取扱いについて」)

頑固な松ヤニには、まず安全な消毒用エタノールを試し、それでも落ちない場合は「強力タイプ」や「プロ仕様」と銘打たれた専用クリーナーを検討するのが、最も安全かつ確実な対処法と言えます。

実践!剪定鋏のヤニ取り代用テクニック

実践!剪定鋏のヤニ取り代用テクニック

和盆日和・イメージ

  • ヤニ取りで重曹を使う方法
  • 油汚れ用洗剤やクレンザーの活用法
  • ヤニ取り後の簡単な刃の研ぎ方
  • 錆を防ぐ油の塗り方と保管のコツ
  • 切れ味を確認する試し切りの方法
  • まとめ:剪定鋏のヤニ取り代用は?身近な物で簡単手入れ

ヤニ取りで重曹を使う方法

ヤニ取りで重曹を使う方法

和盆日和・イメージ

専用クリーナーが手元にない場合に、最も手軽で安全、かつ効果的な代用品が「重曹」です。正式名称を「炭酸水素ナトリウム」と言い、食用のベーキングパウダーから掃除用まで幅広く使われています。重曹がヤニ取りに有効な理由は、「弱アルカリ性による化学的作用」「粒子による穏やかな研磨作用」の二つの力を併せ持っているためです。

効果を最大限に引き出すためのポイントは、「ペースト状にして使う」ことです。これにより、重曹が刃に密着し、ヤニと長時間反応させることができます。

重曹ペーストを使ったヤニ取り手順

  1. まず、小さな容器に重曹を大さじ1〜2杯程度入れます。そこに水を少しずつ、スポイトや指で数滴ずつ加えながら、よく練り混ぜます。理想的な硬さは、垂れ落ちない程度の「歯磨き粉」くらいです。

  2. 作った重曹ペーストを、ヤニが付着している刃の部分に、指や使い古しの歯ブラシで厚めに塗り広げます。刃の裏側や隙間にもしっかりと塗り込みましょう。

  3. そのままの状態で10分から15分ほど放置します。すると、重曹のアルカリ成分が酸性のヤニと化学反応を起こし、汚れがじわじわと浮き上がってきます。

  4. 時間が経ったら、メラミンスポンジや濡らした布、歯ブラシなどで円を描くように優しく擦り、汚れを落とします。

  5. 最後に、流水で重曹と汚れを完全に洗い流します。洗い終わったら、即座に乾いた布で水分を完全に拭き取ることが錆びを防ぐ上で非常に重要です。

重曹活用のポイント

ペースト状にすることで、刃への密着度が高まり、ヤニへの浸透力と分解効果が格段にアップします。また、作業後は必ず防錆のために油を塗ることを忘れないでください。この方法はほとんどのヤニ汚れに有効で、コストもほとんどかからないため、最もおすすめの代用テクニックです。

油汚れ用洗剤やクレンザーの活用法

油汚れ用洗剤やクレンザーの活用法

和盆日和・イメージ

重曹と並んで家庭に常備されていることが多い、キッチンの油汚れ用アルカリ性洗剤クレンザー(磨き粉)も、剪定鋏のヤニ取りに代用することが可能です。ただし、これらは洗浄力や研磨力が強力なため、特性を理解し、注意して使用する必要があります。

油汚れ用洗剤(マジックリンなど)

換気扇やコンロ周りの油汚れを落とすための洗剤は、水酸化ナトリウムなどの強力なアルカリ剤を含んでいることが多く、ヤニに対しても高い分解能力を発揮します。使い方は専用クリーナーとほぼ同じで、刃に吹き付けて数分放置し、布で拭き取ります。

油汚れ用洗剤の使用上の注意

洗浄成分が非常に強力なため、使用後は大量の水で洗剤成分を完全に洗い流すことが必須です。成分がわずかでも残っていると、金属を腐食させ、深刻な錆びの原因となる可能性があります。また、皮膚への刺激が強いため、作業時には必ずゴム手袋を着用してください。

クレンザー(磨き粉)

クレンザーは、界面活性剤による洗浄力に加え、研磨剤(炭酸カルシウムや珪酸鉱物など)の物理的な力で汚れを削り落とすのが最大の特徴です。重曹ペーストや洗剤でも歯が立たないような、長期間放置されて炭化してしまったような頑固なヤニに最終手段として有効です。

少量の水をつけたスポンジにクレンザーを取り、汚れた部分を優しく、一定方向に擦ります。ただし、その名の通り「磨き粉」なので、強く擦りすぎると刃の表面に無数の細かい傷(スクラッチ)をつけてしまうリスクがあります。この傷は切れ味を損なうだけでなく、傷の凹凸に水分が溜まりやすくなり、かえって錆びを誘発する原因にもなりかねません。

私の経験則ですが、まずは重曹や油汚れ用洗剤といった「化学的な力」で汚れを浮かせる方法を試し、それでも残るごく一部の頑固な汚れに対してのみ、クレンザーを「ピンポイントで優しく」使うのが、刃へのダメージを最小限に抑えるコツだと感じています。

これらの代用品は効果が高い反面、リスクも伴います。使用後は十分すぎるほどのすすぎと、徹底した乾燥、そして確実な防錆処理が不可欠です。

ヤニ取り後の簡単な刃の研ぎ方

ヤニ取り後の簡単な刃の研ぎ方

和盆日和・イメージ

ヤニを綺麗に落とし、刃の素顔が見えたら、次は切れ味を直接左右する最も重要な工程、「研ぎ」です。一見、職人技のように思えるかもしれませんが、ハンディタイプのダイヤモンドシャープナーを使えば、初心者でも驚くほど簡単かつ的確に刃先を鋭くすることができます。

研ぎの最大の原則は、「切る側の刃(切り刃)だけを、元の角度を維持して研ぐ」ということです。包丁とは異なり、剪定鋏は「切り刃」と「受け刃」が噛み合うことで切断するため、両方を研ぐ必要はありません。

ダイヤモンドシャープナーを使った研ぎの基本手順

  1. まず、剪定鋏をよく見て、刃が斜めに角度を持って削られている「切り刃」と、平らな「受け刃」を明確に区別します。

  2. シャープナーの平らな面を、切り刃の斜めの角度にぴったりと合わせて当てます。この角度を保つことが最も重要です。光に透かして、隙間ができないように確認しましょう。

  3. 刃の根本から刃先に向かって、「スーッ、スーッ」と一定の方向に5〜10回程度、軽い力で滑らせるように研ぎます。このとき、絶対に往復させたり、力を入れすぎたりしないでください。刃先を撫でるような感覚です。

  4. 研ぎ終わると、刃の裏側に微細な金属のめくれ、いわゆる「バリ(返り)」ができます。指の腹でそっと触ると、ザラっとした感触で確認できます。このバリを取るために、刃の裏側全体をシャープナーで1〜2回、本当に軽く撫でるように滑らせます。

研ぎの三大原則

  • 角度を絶対に変えない:メーカーが設定した最適な切れ味の角度を尊重します。
  • 力を入れすぎない:削り取るのではなく、刃先を整えるイメージです。
  • 必ず一方向に動かす:往復運動は刃先を丸め、切れ味を鈍らせる原因になります。

上級者向けの豆知識:「小刃(こば)付け」

切り刃の先端を、さらに鈍角に軽く研ぐことで「小刃」という微細な第二の刃を付ける技法があります。これにより刃先の強度が格段に増し、硬い枝を切った際の刃こぼれ(マイクロチップ)を防ぎ、切れ味の持続性(刃持ち)が向上します。ただ、非常に繊細な作業なので、まずは基本の研ぎをマスターすることが先決です。興味のある方は調べてみてください。

正しい研ぎ方をマスターすれば、高価なハサミでなくても、いつでも快適な切れ味を維持することが可能です。

錆を防ぐ油の塗り方と保管のコツ

錆を防ぐ油の塗り方と保管のコツ

和盆日和・イメージ

念入りなヤニ取りと研ぎで最高の状態に戻した剪定鋏も、その後の処理を怠ればすぐに錆びてしまいます。最後の仕上げとして「適切な油を塗り、正しく保管する」こと。このひと手間が、道具の寿命を決定づけると言っても過言ではありません。

油の選び方と塗り方

使用する油は、専用の「刃物用椿油」が最も理想的です。椿油は不乾性油という種類に分類され、空気に触れても酸化して固まりにくく、安定した油膜を長期間維持してくれるため、日本の刃物手入れに古くから愛用されてきました。

もし手元にない場合は、ミシン油や、無色透明の鉱物油(ミネラルオイル)でも代用できます。逆に、サラダ油やオリーブオイルなどの食用油は、時間が経つと酸化して粘つき、ホコリやゴミを吸着してしまい、かえってハサミの動きを悪くする原因になるため、長期保管を目的とした使用は避けるべきです。

  1. 乾いた清潔な布(ウエスやティッシュペーパー)に、油を1〜2滴、ごく少量だけ染み込ませます。
  2. 刃の表裏、そしてハサミの開閉の要である中心のネジ(ボルト・ナット)周辺やバネに、油を薄く丁寧に塗り広げます。
  3. 塗り終わったら、油が付いていない乾いた布で、表面の余分な油を軽く拭き取ります。油膜は目に見えないほど薄くて十分です。

油を塗る量は、本当にごくわずかで大丈夫です。塗りすぎはベタつきの原因になるので、「刃の表面をコーティングする」という意識で、薄い膜を作るイメージで行いましょう。

長持ちさせるための正しい保管方法

お手入れが終わった剪定鋏は、次の点に注意して保管します。

  • 湿気を徹底的に避ける:錆びの最大の敵は湿気です。物置の床に直置きしたり、雨に濡れる可能性のある場所に置くのは厳禁。工具箱や引き出しの中など、乾燥した屋内で保管してください。
  • 刃を閉じてロックする:安全のため、そして不意の衝撃から繊細な刃先を守るために、必ず刃を閉じた状態でストッパーをかけて保管します。
  • 専用ケースや革サックに入れる:購入時に付属していたケースや、別売りの革サックに入れて保管するのが理想です。刃を物理的に保護し、ホコリの付着も防ぎます。

正しい油の塗布と適切な保管を実践することで、剪定鋏を錆びや劣化から確実に守り、いつでも最高の状態で次の作業に臨むことができます。

切れ味を確認する試し切りの方法

切れ味を確認する試し切りの方法

和盆日和・イメージ

一連の手入れが完了したら、最後にその成果、つまり切れ味がどれだけ復活したかを客観的に確認しましょう。実際に庭木の枝を切って試すのが最も確実ですが、作業前や室内でも手軽にチェックできる便利な方法があります。

それは、ごく身近にある「薄い紙を切ってみる」という方法です。新聞紙やコピー用紙があれば十分です。

やり方は簡単。紙の端を片手で持ち、垂れ下がった部分を剪定鋏で切ってみるだけです。この時、刃のどの部分で切っても同じ結果になるか、刃元から刃先まで全体を使って切ってみると、より正確に研ぎ具合を評価できます。

切れ味の評価基準

評価 状態 対処法
◎ 理想的 刃が紙に吸い付くように「スッ」と入り、音もなく、抵抗なく滑らかに切れる。切り口は直線で、毛羽立ちが一切ない。 お手入れは完璧です。
○ 良好 少し「ジョキ」という音はするが、途中で引っかかることなく切れる。切り口もほぼ綺麗。 実用上は問題ありません。
△ 要再調整 紙が刃の間で滑ったり、「グシャッ」と潰れるようにしか切れない。切り口が大きく毛羽立つ。 研ぎが不十分な可能性があります。「ヤニ取り後の簡単な刃の研ぎ方」に戻り、特に角度とバリ取りを確認しながら研ぎ直しましょう。

この試し切りは、お手入れの成果測定だけでなく、剪定作業を始める前の「始業前点検」として習慣にするのも非常におすすめです。作業前に切れ味を確認することで、その日の作業効率が格段に上がり、植物に与えるダメージを最小限に抑えることができます。

この簡単なテストを通じて、自分のお手入れの成果を客観的に評価し、道具への理解を深めることができます。鋭い切れ味が復活したハサミでの作業は、これまでが嘘のように快適で、楽しいものになるはずです。

まとめ:剪定鋏のヤニ取り代用は?身近な物で簡単手入れ

この記事で解説した、剪定鋏のヤニ取りに身近なものを代用する方法と、その後の本格的なメンテナンス手順の要点を以下にまとめます。これらのポイントを実践することで、あなたの剪定鋏は長く、そして常に最高のパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。

  • 剪定鋏の手入れは植物の病気予防と作業者の安全確保に不可欠である
  • メンテナンスの基本フローは「洗浄」「錆び取り」「研ぎ」「保護」の4段階
  • 市販の専用スプレーはアルカリ性の力で酸性のヤニを科学的に分解する
  • 家庭にある代用品として最も安全かつ効果的なのは重曹
  • 重曹は水と練ってペースト状にすることで刃に密着し効果が向上する
  • キッチンの油汚れ用洗剤も強力だが使用後の完全なすすぎが必須
  • クレンザーは研磨力が強いため刃を傷つけるリスクがあり最終手段と心得る
  • 松などの頑固なヤニには引火に注意しつつ消毒用エタノールが有効
  • 研ぐのは片側の「切り刃」のみで「受け刃」は絶対に研がない
  • 研ぐ際は元の刃の角度を厳守し根本から刃先へ一方向に動かす
  • 研ぎの後は刃の裏に生じた「バリ」を軽く撫でて必ず取り除く
  • 錆び止めには酸化しにくい刃物用椿油が最も適している
  • 食用油は酸化してベタつくため長期保管には向かない
  • 油はごく薄く塗布し余分な油は拭き取る
  • 保管場所は湿気を避け刃を閉じてケースに入れるのが理想
  • 手入れの成果はコピー用紙などを切ることで客観的に確認できる

 

▶剪定ばさみについてもっと知ろう!(関連記事)

-剪定ばさみ