こんにちは、和盆日和のSです。
盆栽を見ていると、まっすぐ伸びた松もあれば、幹が大きく曲がった真柏、崖から垂れ下がるように仕立てられた木もあります。同じ樹種でも姿がずいぶん違うので、「この形には名前があるのかな」と気になってくることがあります。
そこで出てくるのが盆栽の樹形です。直幹、模様木、斜幹、文人木、懸崖など、それぞれに名前があります。
ただ、名前を丸暗記するだけでは樹形作りにはつながりません。大切なのは、手元の素材を見たときに「この幹ならどんな形が自然に見えるだろう」と考えられるようになることかなと思います。
この記事では、代表的な盆栽樹形の種類から、根張り、立ち上がり、コケ順、正面の見方、剪定や針金を使った作り方まで、初めての方にも分かる順番で見ていきます。
記事のポイント
- 代表的な盆栽樹形の種類と違い
- 素材に合った樹形を見つける考え方
- 根張りやコケ順など樹形を見る基本
- 剪定と針金で樹形を作る手順
盆栽の樹形種類を初心者向け解説|素材に合う形と作り方の基本を知る
最初は直幹や模様木など代表的な名前を知り、それぞれが自然界のどんな木を表しているのかを見ると理解しやすいですよ。盆栽の樹形は、木を決められた型へ押し込むための規則ではありません。自然の木が見せる姿を分かりやすく分類したものです。
- 盆栽の樹形とは
- 盆栽樹形の種類一覧
- 直幹と模様木の違い
- 斜幹と吹き流しの違い
- 懸崖と半懸崖の違い
- 文人木と箒立ち
- 双幹と株立ち
- 根連なりと筏吹き
- 寄せ植えと石付き
- 盆栽樹形は何種類あるか
盆栽の樹形とは
盆栽の樹形とは、幹の立ち方や傾き、曲がり、幹の本数、枝の広がりなどから表される木全体の姿を指します。
例えば一本の幹が上へまっすぐ伸びれば直幹、幹に自然な曲がりがあれば模様木、幹全体が片側へ傾けば斜幹と呼ばれます。
さらに、断崖から木が垂れ下がるような姿を表す懸崖、風を受け続けた木を思わせる吹き流し、複数の木で林の景色を作る寄せ植えなど、自然環境を想像させる形もあります。
樹形は完成形を決めるためだけの名前ではありません。木がどんな場所で、どんな年月を過ごしてきたように見えるかを考えるための手がかりです。
そのため「盆栽の樹形は全部で何種類ですか」と聞かれても、固定された数で答えるのは難しいところがあります。幹の姿だけを数える資料もあれば、双幹や株立ち、根連なり、寄せ植え、石付きなどまで含める資料もあるからです。
初心者のうちは数にこだわるより、まず代表的な形の特徴を知るほうが実際の盆栽を見るときに役立ちます。
盆栽樹形の種類一覧
代表的な盆栽樹形を一覧で見ると、違いがつかみやすくなります。

| 樹形 | 読み方 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 直幹 | ちょっかん | 一本の幹が上へまっすぐ伸びる |
| 模様木 | もようぎ | 幹に自然な曲がりがある |
| 斜幹 | しゃかん | 幹全体が左右どちらかへ傾く |
| 文人木 | ぶんじんぎ | 細長い幹と少ない枝で余白を見せる |
| 箒立ち | ほうきだち | 幹の途中から細かな枝が広がる |
| 吹き流し | ふきながし | 幹と枝が一方向へ流れる |
| 懸崖 | けんがい | 幹や主枝が鉢より下へ垂れ下がる |
| 半懸崖 | はんけんがい | 横から下方向へ浅く流れる |
| 蟠幹 | ばんかん | 幹が大きく曲がりねじれる |
| 双幹 | そうかん | 一つの根元から二本の幹が立つ |
| 株立ち | かぶだち | 一つの株元から複数の幹が立つ |
| 根連なり | ねつらなり | 一つの根で複数の幹がつながる |
| 筏吹き | いかだぶき | 横倒しの幹から複数の幹が立つ |
| 寄せ植え | よせうえ | 複数の木を植えて林を表現する |
| 石付き | いしつき | 石と根や幹を組み合わせて景色を作る |
この一覧をすべて暗記する必要はありません。まず直幹、模様木、斜幹、懸崖あたりを見分けられるようになるだけでも、盆栽を見る楽しさはかなり変わります。
直幹と模様木の違い
直幹
直幹は、一本の幹が根元から樹芯までほぼ垂直に伸びる樹形です。
見た目が単純なので初心者向きに感じますが、実際にはごまかしが利きにくい形でもあります。幹がまっすぐなら、それだけ根張りや幹の太さの変化、枝の位置が目につきやすくなるからです。
根元が太く、上へ向かうほど少しずつ細くなる幹があると、大きな木を縮めたような雰囲気が出てきます。
黒松、五葉松、杉、檜などで見かける機会が多い樹形です。
模様木
模様木は、幹に曲がりを持たせながら全体として上へ伸びる形です。盆栽では非常によく見かけます。
ここで気をつけたいのが、幹を左右へ同じ幅で曲げればよいわけではないこと。規則的なジグザグになると、自然の木というより人が曲げた印象が前へ出てしまいます。
左右だけでなく前後にも動きがあり、曲がりの大きさにも変化があると、奥行きが生まれます。
◆Sのワンポイントアドバイス
初めて素材から樹形を考えるなら、私は模様木を候補に入れやすいかなと思います。苗木が最初から持っている小さな曲がりを生かせるので、木を無理に別の姿へ変える必要が少ないからです。
斜幹と吹き流しの違い
斜幹と吹き流しは似て見えますが、景色として考えると違いが分かりやすくなります。
斜幹は主に幹そのものが片側へ傾いた樹形です。斜面に立つ木や、風や積雪などの影響を受けながら傾いて育った木を思わせます。
一方の吹き流しは、幹だけではなく枝もおおむね同じ方向へ流れます。長い間、一方向から風を受け続けた木の姿を想像すると分かりやすいでしょう。
迷ったときは「幹が傾いているのか」「木全体が一方向へなびいているのか」を見てみてください。前者が斜幹、後者が吹き流しと考えると見分けやすくなります。
斜幹では、幹が傾く方向と反対側に根が張っていると、木を支えているような説得力が出ます。鉢へ斜めに植えただけではなく、根元まで含めて景色を見るのがポイントですよ。
懸崖と半懸崖の違い
懸崖は、断崖や岩場から木が下へ垂れ下がりながら生きている姿を表した樹形です。
幹や主要な枝が鉢の外へ流れ、一般には鉢底より下まで下がるような姿を懸崖と呼びます。ただし、樹形は自然の姿を表現する考え方なので、境界を数値だけで機械的に判断する必要はありません。
半懸崖は、懸崖ほど深く垂れず、横方向からやや下へ流れる姿です。崖の縁や斜面から横へ伸びる木を思い浮かべると分かりやすいでしょう。
懸崖で大事なのは、ただ枝を下げることではありません。下へ伸びながらも枝先や芽には上を向こうとする動きがあると、厳しい環境でも生きている木らしく見えてきます。
真柏は懸崖や半懸崖とも相性のよい樹種の一つです。真柏そのものの管理や針金掛け、ジンやシャリまで詳しく知りたい場合は、真柏盆栽の育て方と仕立て方と合わせて確認すると理解しやすいですよ。
文人木と箒立ち
文人木
文人木は、細く長い幹と少ない枝によって、余白を生かす樹形です。
下枝が少なく、枝葉が比較的高い位置にまとまることもあります。そのため、一般的な盆栽では「枝が少ない」「幹が細い」と感じる素材でも、幹筋に味があれば文人木として個性を出せる場合があります。
ただし、細い木をそのまま文人木と呼ぶわけではありません。幹の流れ、枝葉を置く位置、空いている部分まで含めた姿が大切です。
箒立ち
箒立ちは、まっすぐ伸びた幹の途中から枝が細かく分かれ、箒を逆さにしたように樹冠が広がる形です。
代表的なのはケヤキ。落葉後には細かく分岐した枝がよく見えるため、冬姿も大きな見どころになります。
松のように枝棚を作っていく感覚とはかなり違い、雑木の自然な枝分かれそのものを楽しむ樹形です。
双幹と株立ち
双幹は、一つの株元から二本の幹が立ち上がる樹形です。
二本を同じ太さ、同じ高さにそろえるより、一方を主幹、もう一方を副幹として太さや高さに違いを持たせると、自然な親子の木のように見えてきます。
根元から三本なら三幹と呼ばれます。さらに複数の幹が一つの株元から立ち上がる姿は、株立ちとして扱われることがあります。
モミジ、カエデ、ボケ、長寿梅などでは、株元から出た複数の幹を生かした姿もよく合います。
根連なりと筏吹き
根連なりは、一見すると複数の木が並んでいるように見えますが、それぞれの幹が一つの根でつながっている樹形です。
寄せ植えとの大きな違いは、根連なりが一つの個体からできている点です。
筏吹きは、倒れた一本の幹から上向きの枝が何本も伸び、その枝がそれぞれ独立した幹のように育った姿を表します。
つまり、根連なりは根でつながり、筏吹きは横になった元の幹でつながっている、と覚えると分かりやすいですよ。
寄せ植えと石付き
寄せ植えは、複数の独立した木を一つの鉢へ植え、林や森を表現する方法です。
同じ大きさの木を等間隔に並べるより、高さや太さ、前後の位置を変えたほうが自然の林に近づきます。見る位置によって木が重なり、奥にも木が続いているように感じられる配置が見どころです。
石付きは、木だけではなく石まで含めて景色を作ります。根が石を抱いたり、石の表面を通って土へ伸びたりすることで、岩山や崖に根を下ろした木を表現できます。
このあたりになると「幹がどんな形か」という分類だけではなく、一鉢の中にどんな景色を作るかという意味合いが大きくなります。
盆栽樹形は何種類あるか
盆栽の樹形について調べると、「基本は8種類」「10種類」「14種類」など、資料によって数が違うことがあります。
これはどれか一つだけが間違っているというより、どこまでを樹形として数えるかが違うためです。
直幹や模様木など幹の形を中心に数える場合もあれば、双幹や株立ちのような幹数による分類、寄せ植えや石付きのような景観的な形まで含める場合もあります。
なので初心者のうちは「盆栽樹形は○種類」と数字を覚えるより、代表的な形と違いを知っておけば十分です。
盆栽の樹形種類を初心者向け解説|素材に合う形と作り方の基本を実践する
樹形の名前が分かったら、次は手元の木へどう当てはめるかです。ここで順番を逆にしないことが大切。好きな樹形を先に決めて無理に木を合わせるより、根元や幹の特徴を見て、その素材がすでに持っている姿を生かしていきます。
- 素材に合う樹形の決め方
- 根張りと立ち上がりを見る
- コケ順と幹筋を見る
- 盆栽の正面を決める
- 剪定と針金の役割
- 忌み枝は必ず切るのか
- 枝のない空間も樹形になる
- 樹種に合う樹形を考える
- 樹形を作る基本手順
- 初心者が避けたい樹形作り
- 盆栽樹形に関するよくある質問
- 盆栽の樹形種類を初心者向け解説|素材に合う形と作り方の基本まとめ
素材に合う樹形の決め方
素材を前にしたとき、いきなり枝先を見る必要はありません。
私なら最初に根元を見ます。その次に幹の立ち上がり、幹がどちらへ動いているか、上へ向かってどう細くなっているかを見ていきます。
見る順番の目安は、根張り、立ち上がり、幹筋、コケ順、枝の位置、樹芯候補です。
例えば幹がまっすぐで根張りも素直なら直幹が候補になります。根元から自然な曲がりがあれば模様木、最初から大きく片側へ傾いていれば斜幹が考えやすいでしょう。
細く長く、下枝が少ない木なら文人木として生かせる場合があります。横へ長く伸びる幹があるなら、植え付け角度を変えることで半懸崖や懸崖が見えてくるかもしれません。
樹形を決めるときは「この形にしたい」よりも、「この木はすでにどんな姿を持っているか」から考えると無理がありません。

根張りと立ち上がりを見る
盆栽の上半分は剪定や針金で大きく変えられることがあります。しかし、根張りや根元近くの太い幹は短期間では変えにくい部分です。
だから素材を見るときほど、葉の多さより根元をよく見ておきたいところ。
根張りとは、土の表面付近に見える根の広がりです。直幹や模様木では、周囲へ自然に根が広がっていると安定感が出ます。
斜幹や懸崖では、必ずしも四方均等でなくても構いません。幹が流れる方向とは反対側に目立つ根があると、木が倒れないよう踏ん張っている景色を作れます。
立ち上がりは、根元から最初の曲までの幹です。盆栽全体の印象を決めやすいので、上の枝より先に見てください。
コケ順と幹筋を見る
コケ順とは、根元から樹芯へ向かって幹が少しずつ細くなっていく状態です。
盆栽は小さな鉢の中で大木を感じさせるものなので、根元が太く、上へ行くほど細く見えると年月を重ねた木のような印象が出ます。
逆に途中だけ急に太く見えたり、上部と根元の太さがほとんど変わらなかったりすると、大木らしさが出にくい場合があります。
幹筋は正面から見た曲がりだけではありません。鉢を少し回しながら、前後にも動きがあるか確認してください。
模様木の場合、正面からはきれいに曲がって見えても、横から見ると一枚の板のように平らなことがあります。前後の動きまで見ておくと立体感を作りやすくなりますよ。
モミジのような雑木で根元から幹を太く育てたい場合は、樹形を作り込む時期とは別に、枝を伸ばして太らせる期間を取ることもあります。詳しくはもみじ盆栽を太くする方法で解説しています。
盆栽の正面を決める
盆栽には観賞するときの基本となる正面があります。
葉が一番多く見える方向を選ぶわけではなく、根張り、立ち上がり、幹筋、枝の位置、奥行き、樹芯の向きを合わせて見ていきます。
まず鉢を一周させながら根元を見ます。根がよく見え、幹の立ち上がりにも魅力を感じる方向をいくつか候補にしてください。
次に幹を見ます。途中の曲がりが隠れず、幹の流れを目で追いやすいか確認しましょう。
そのあと枝を見るのがおすすめです。枝は剪定や針金で変えられる余地がありますが、根元や太い幹は簡単には動かせないからです。

◆Sのワンポイントアドバイス
素材を見るときは、その場ですぐ一本の正面に決めなくても大丈夫ですよ。鉢を回して候補を二つくらい残し、植え付け角度まで変えて眺めると、急に幹の流れがよく見える位置が見つかることがあります。
剪定と針金の役割
樹形作りでは剪定と針金掛けを一緒に考えますが、二つの仕事は違います。
剪定は、どの枝を残してどの枝を使わないかを決める作業。針金掛けは、残した枝や幹をどこへ向けるか決める作業です。

例えば幹の前を横切る枝があったとします。その枝が将来不要なら剪定します。一方、枝自体は使いたいけれど方向だけ直したいなら、針金で位置を変える方法があります。
初めて樹形を作るときは、一度に枝を切りすぎないほうが安心です。一度切った枝は元へ戻せません。将来使う可能性がある枝なら、樹形が見えてくるまで残しておく考え方もあります。
針金掛けを始める場合は、枝の太さに合った盆栽用アルミ線を用意すると扱いやすいですよ。枝を切る作業では盆栽鋏、巻いた針金を外すときには盆栽用の針金切り鋏があると作業しやすくなります。
樹形作りでそろえやすい基本の3点
これから剪定や針金掛けを始めるなら、まずは必要な道具だけをそろえると無駄がありません。アルミ線は枝によって使う太さが変わるため、複数サイズを比較できるものも便利です。
※Amazonの商品価格や在庫、仕様は変更される場合があります。購入前に商品ページで最新情報を確認してください。
針金の太さの選び方や巻き方、外す時期まで確認したい場合は、盆栽の針金掛け完全ガイドで詳しく解説しています。盆栽鋏そのものを比較して選びたい場合は、盆栽鋏の選び方も参考になります。
太い枝を無理に一度で曲げないでください。枝の太さ、樹種、季節、樹の状態によって折れやすさは変わります。また、針金は成長とともに樹皮へ食い込むことがあります。施工後も定期的に確認し、商品を使用するときはメーカーが示す使用方法を確認してください。判断に迷う太枝の曲げや大きな剪定は、盆栽園など専門家へ相談すると安心です。
太くなった幹を曲げる場合の時期や方法は、盆栽の太い幹を曲げる方法でも詳しく紹介しています。
忌み枝は必ず切るのか
盆栽を勉強していると、車枝、かんぬき枝、交差枝、立ち枝、逆枝など「忌み枝」と呼ばれる言葉が出てきます。
例えば同じ高さから左右へ一直線に出る枝は、かんぬき枝と呼ばれることがあります。同じ場所から何本もの枝が出ている状態は車枝です。
こうした枝は幹が部分的に太りすぎたり、幹筋を見えにくくしたりするため、剪定候補になることがあります。
ただし、名前だけを見て全部切る必要はありません。
将来の樹形に必要な枝なら残すことがありますし、木の状態によっては枝を残して生育に使いたい場面もあります。
「忌み枝だから切る」ではなく、「この枝を残したら完成した姿でどう見えるか」で判断してください。
枝のない空間も樹形になる
盆栽を始めたばかりだと、枝葉が多いほど立派に見えるように感じるかもしれません。
ところが、枝と枝の間に何もない場所があるからこそ、幹の曲がりや枝の方向が見えることがあります。
特に文人木や吹き流しでは、枝葉を増やしすぎると本来の軽やかさや風の流れが分かりにくくなる場合があります。
模様木でも同じです。枝が幹をすべて隠してしまえば、せっかく作った幹模様が見えません。
盆栽を見るときは枝だけでなく、枝と枝の間にある空間にも目を向けてみてください。何もない場所も、樹形を作る大事な要素です。
樹種に合う樹形を考える
盆栽はどんな樹種でも、まったく同じ形へ仕立てればよいわけではありません。
木によって幹の伸び方、枝分かれ、葉の大きさ、枝の曲げやすさ、根の姿などが違います。
| 樹種 | 見かける主な樹形 |
|---|---|
| 黒松 | 直幹、模様木、斜幹、文人木、懸崖など |
| 五葉松 | 直幹、模様木、文人木、懸崖など |
| 真柏 | 模様木、斜幹、懸崖、吹き流し、石付きなど |
| 杉・檜 | 直幹、多幹、寄せ植えなど |
| ケヤキ | 箒立ちなど |
| モミジ・カエデ | 模様木、双幹、株立ち、寄せ植えなど |
| サツキ | 模様木、斜幹、懸崖など |
もちろん、この表にない樹形へ仕立てられないという意味ではありません。
大切なのは、その樹が自然の中でどんな姿を見せるのかを想像すること。杉なら杉らしさ、松なら松らしさを残したほうが、一鉢を見たときの納得感が出やすいかなと思います。
樹形を作る基本手順
盆栽の樹形は、一日の作業で完成するものではありません。木を育てながら数年単位で幹や枝を作っていくことも珍しくないため、最初から完成形まで一気に進めないことが大切です。
素材全体を見る
最初に根張り、立ち上がり、幹の曲がり、枝の位置、傷、樹芯候補を見ます。枝葉の多さだけで判断しないことです。
正面候補を探す
鉢を回して根元と幹筋が見やすい方向を探します。一つに決めきれなければ候補を残して構いません。
植え付け角度を見る
少し角度を変えるだけで、同じ木が模様木らしく見えたり斜幹らしく見えたりします。懸崖や半懸崖では特に植え付け角度の影響が大きくなります。
使う枝を決める
将来の一の枝、後ろ枝、樹芯などを想像します。まだ迷う枝はすぐ切らず、候補として残しておく方法もあります。
不要な枝を剪定する
幹筋を隠す枝や、明らかに完成形で使わない枝から少しずつ手を入れます。太い枝を切る場合は、切り口の位置と将来の肉巻きも考えてください。
針金で方向を変える
残した枝の角度や前後の位置を調整します。針金で無理に形を決めるのではなく、素材が持つ動きを少し補う感覚で行うと自然に見えます。
枝を育て直す
その後は芽摘みや切り戻しを繰り返し、枝分かれを増やしていきます。伸ばす時期と切る時期を分けて考えることも必要です。
樹冠と樹芯を作る
最後に上部の高さや方向を決め、全体の流れをつなげていきます。樹芯だけが真上へ飛び出したり、逆方向へ逃げたりしていないか確認しましょう。
こうして見ると、樹形作りは「剪定の日」だけの話ではありません。育てることそのものが樹形作りにつながっています。
初心者が避けたい樹形作り
一つ目は、模様木だからといって幹を機械的なS字へ曲げてしまうことです。
左右同じ幅、同じ角度で曲げ続けると、人工的な印象が目立つ場合があります。曲がりに大小を付け、前後にも動きを持たせたほうが自然に見えます。
二つ目は、懸崖にしたいからと太い幹を一気に下へ曲げること。樹形より先に木を傷めてしまっては意味がありません。
三つ目は、枝が多い素材ほど良いと考えることです。枝は後から減らせますが、根張りや太い幹の位置は簡単には変えられません。
そしてもう一つ、最初に決めた樹形へ最後まで固執しないことも大切です。
枝が枯れたり、新しい芽が良い場所から出たり、植え替えで根元がよく見えるようになったりすると、別の正面や樹形のほうが魅力的になることがあります。
盆栽は生きています。何年か育てたあとに樹形を見直すことも、ごく自然なことですよ。
盆栽樹形に関するよくある質問
Q1. 盆栽の樹形は全部で何種類ありますか?
A. 固定された一つの数はありません。直幹や模様木など幹の姿を中心に数える場合と、双幹、株立ち、根連なり、寄せ植え、石付きなどまで含める場合があるためです。初心者の方は、まず直幹、模様木、斜幹、文人木、懸崖、半懸崖、吹き流し、箒立ちなど代表的な形から覚えると分かりやすいですよ。
Q2. 初心者にはどの樹形が向いていますか?
A. 樹形だけで一律には決められませんが、素材が持つ自然な曲がりを使える模様木は考えやすい形の一つです。ただ、幹がまっすぐなら直幹、最初から傾いているなら斜幹など、その木に合った形を選ぶほうが無理なく進められます。
Q3. 樹形は剪定だけで作れますか?
A. 木によっては剪定中心でも形を作れますが、幹や枝の方向を変えたい場合は針金掛けを組み合わせることがあります。剪定は使う枝を選び、針金掛けは残した枝の向きを変える作業と考えると分かりやすいでしょう。
Q4. 盆栽の正面はどうやって決めますか?
A. 根張り、立ち上がり、幹筋、枝の位置、奥行き、樹芯の方向を合わせて決めます。枝よりも後から変えにくい根元や太い幹を先に見て、鉢を回しながら候補を探す方法がおすすめです。
Q5. 若い素材から樹形が完成するまで何年かかりますか?
A. 樹種、素材の太さ、目指す大きさ、作り込みの程度によって大きく異なるため、「何年で完成」と決めることはできません。一般的には数年単位で幹や枝を育てながら少しずつ姿を作っていきます。大きな剪定や曲げ作業を急がず、樹の状態を見ながら進めてください。
盆栽の樹形種類を初心者向け解説|素材に合う形と作り方の基本まとめ
盆栽の樹形には直幹、模様木、斜幹、文人木、懸崖、半懸崖、吹き流し、箒立ち、双幹、株立ち、根連なり、筏吹き、寄せ植え、石付きなどがあります。
ただ、一番大切なのは名前をたくさん覚えることではありません。
素材の根張り、立ち上がり、幹筋、コケ順を見て、その木がすでに持っている姿を生かすこと。ここが樹形作りの出発点です。
幹がまっすぐなら直幹、自然な曲がりがあるなら模様木、大きく傾いていれば斜幹。細く長い幹なら文人木、横や下へ流れる幹なら半懸崖や懸崖が候補になるかもしれません。
そして、剪定は残す枝を決め、針金掛けは残した枝の方向を変えるために使います。一度に完成させようとせず、育てながら形を見直していくくらいでちょうどいいですよ。
- 樹形の種類は固定された数ではない
- 最初は直幹や模様木など代表形から覚える
- 根張りと立ち上がりを枝より先に見る
- 素材の幹筋に合った樹形を選ぶ
- 正面は根元と幹を中心に決める
- 剪定と針金掛けの役割を分けて考える
- 枝と同じくらい空間も大切にする
- 完成形へ急いで木を無理に曲げない
樹形を知ったあとで自分の盆栽を一周させて眺めてみると、これまで気づかなかった根元の動きや幹の流れが見えてくることがあります。
あなたの木がすでに持っている形を探すところから、じっくり盆栽作りを楽しんでみてください。
なお、剪定時期や針金を掛けられる程度は樹種や樹勢、栽培環境によって変わります。刃物や針金を使用する際は各製品の説明を確認し、大きな枝の切除や判断が難しい作業については盆栽園などの専門家へ相談してください。
以上、和盆日和の「S」でした。